背景
D学園様は、入学希望者向けの願書請求フォーム、オープンキャンパス案内、年間行事カレンダーをWordPressサイトで運用されていました。
しかし、サーバー会社から「PHP7.4はサポート終了済みのため、PHP8.x系へ更新が必要」と通知を受け、対応が急務に。実際にPHP 7.4は2022年11月28日で公式サポートが終了しており、継続利用はセキュリティ上のリスクがある状態でした。
初期状態の問題点
- PHPバージョン:7.4系(サポート終了済み)
- WordPress本体:5.x系のまま長期運用
- カスタム実装:独自テーマとプラグイン追加が多く、互換性不明
- フォーム運用:願書請求フォームが常時稼働必須
- 保守状況:更新すると壊れる懸念から、アップデートを先送り
教育機関ならではの運用制約
教育機関サイトは、一般的なコーポレートサイトよりも「止められない時期」が明確です。
- 願書請求が増える秋〜冬(出願前)のアクセスピーク
- オープンキャンパス告知の更新が集中する時期
- 学校行事・入試関連情報の公開スケジュールが固定
このため、単純な一括更新ではなく、停止リスクを最小化した段階的な移行計画が必要でした。
実施したバージョンアップ施策
1. 現状分析とアップグレード方針の確定
まず、本番構成を複製したステージング環境を作成し、テーマ・プラグイン・フォーム導線の依存関係を洗い出しました。
確認した技術要件:
- PHP 7.4は公式EOLのため継続利用は非推奨
- WordPress公式はPHP 8.3以上を推奨(互換面では6.x系で8.2も実運用可能)
- PHP 8系はエンジン最適化や型関連改善により、環境次第で応答改善が見込める
2. ステージング環境での互換性検証
本番同等のデータで検証を行い、主要ページと重要導線を重点的に確認しました。
検証対象:
- 願書請求フォーム(入力・確認・送信・自動返信)
- 行事案内ページ(カスタム投稿・検索・一覧)
- お知らせ更新フロー(管理画面からの投稿)
- 主要プラグインの管理画面挙動
判定結果:
非互換プラグイン2点を確認(PHP8.2で警告・一部機能不全)
3. 非互換プラグイン2点を代替へ置き換え
互換性に問題があった2点は、同等機能を持つ保守継続中のプラグインへ置き換えました。
- 既存データ移行手順を事前作成
- URL構造・入力項目・通知メール仕様を維持
- 置き換え後にフォーム送信テストを複数パターンで実施
4. テーマの軽微修正
独自テーマは全面改修せず、PHP8.2で警告となる箇所のみ最小限修正しました。
主な修正:
- 型の不一致で警告となる処理の調整
- 非推奨記法の置き換え
- null扱いが曖昧な条件分岐の明確化
結果:
見た目・導線を変えずに互換性を確保
5. 段階アップグレードの実施(WP 5.x → 6.x → PHP 8.2)
不具合切り分けを容易にするため、以下の順で段階的に実施しました。
- WordPressを5.x系から6.x系へ更新
- プラグイン・テーマを互換版へ統一
- PHPを7.4から8.2へ切り替え
- キャッシュ再構築と動作確認
作業は深夜帯に限定し、願書シーズン本格化前に完了させました。
6. リリース後の監視と即応体制
リリース後72時間は重点監視期間とし、フォーム送信ログ・エラーログ・表示速度を継続確認しました。
- 主要ページの死活監視
- フォーム送信成功率のモニタリング
- PHPエラー通知のリアルタイム確認
成果
システム指標の改善
| 指標 | 改善前 | 改善後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| PHPバージョン | 7.4 | 8.2 | サポート対象へ移行 |
| WordPressバージョン | 5.x系 | 6.x系 | 最新世代へ更新 |
| 主要ページ表示速度 | 約2.0秒 | 約1.0秒 | 約50%改善 |
| セキュリティアラート件数(月次) | 18件 | 4件 | 約78%減少 |
運用面の改善
- ✅ 願書請求フォームを停止せずに移行完了
- ✅ サーバー会社からの強制停止リスクを回避
- ✅ 行事案内・入試情報の更新業務を継続
- ✅ アップデート忌避状態を解消し、定期更新に移行
お客様の声
「サーバー会社から更新期限の連絡が来ても、正直どこから手を付けるべきか分かりませんでした。願書請求の時期に止められないという前提で、段階的に進めていただけたのが非常に助かりました。移行後は表示も速くなり、運用担当としての不安が大きく減りました。」
— D学園様 広報ご担当者様
継続的な改善
移行完了後は、以下を継続して運用しています。
- 月次のWordPress・プラグイン更新
- 入試シーズン前の事前互換性チェック
- フォーム疎通テストの定期実施
- エラーログとセキュリティ通知の定点監視
まとめ
教育機関サイトのバージョンアップでは、**「更新すること」より「止めずに更新すること」**が重要です。
今回のケースでは、ステージング検証と段階アップグレードにより、願書請求などの重要導線を維持したままPHP 8.2・WordPress 6.xへの移行を実現しました。結果として、停止リスクの回避だけでなく、表示速度と運用安全性の両面で改善につながっています。